こんにちは、井上向介です。アラフィフ、サラリーマン、4人家族。子供2人は社会人となり独立。現在、妻と二人で生活しています。
この記事は、「独身の叔父・叔母の老後の世話・介護」について悩んでいる甥・姪に向けた記事の【前編】です。
【こんな悩みありませんか?】
- 独身の叔父、叔母から介護を頼まれて困っている
- 独身の叔父、叔母の面倒はどうやって見ればいいのか?
ここでは叔父叔母が費用負担し、なおかつ納得のいく金銭的報酬を得られるのであれば「叔父叔母の世話や介護を行ってもよい」と考えている人を対象とし、手続きの進め方について解説しています。
結論、「金銭面や法的手続き」などの事前準備をしっかりと固めてから、介護に進みましょう。
【前編・後編の内容】
記事のボリュームが大きくなったので、【前編】、【後編】に分けています。
- 【前編】まだ叔父叔母からは正式な申し入れはないが、どのような準備をしておけばいいのか「心の準備段階」について記載しています。
- 【後編】叔父叔母から、正式な申し入れがあった後にやるべきことについて記載しています。
【目指すべきゴール】
⇒報酬をもらい介護を行う
- 独身の叔父・叔母の介護候補人・相続人は誰か
- 独身の叔父・叔母にやってもらうこと
- 甥・姪がすべきこと
【後編】はこちら↓
⇒【独身叔父・叔母】介護と面倒と報酬 甥・姪のやるべきこと【後編】
独身叔父・叔母の介護ロードマップ
未婚率の上昇にともない、みなさんの親族にも生涯独身を貫く人が増えているでしょう。
しかし、その「独身者の最後」はいったい誰が面倒を見るのでしょうか?
もしも、あなたにその役目が回ってきたときどうしますか?身内(とくに叔父・叔母)に独身者がいる場合、決して他人事ではありません。
来るべき時に備え、独身叔父叔母の介護・相続についてのロードマップを作成しました。まずは全体の流れを把握しましょう。
基本方針
この記事で記載する「独身叔父・叔母の介護」の基本方針は、「やることはやる、貰うものは貰う」です。
自分自身の親の介護も控える中、叔父・叔母の介護を無償で行うことは現実的ではありません。ビジネスと割り切って考えましょう。
ステップ①:人間関係の整理
最初に親族の人間関係を整理します。そして、独身叔父・叔母の「介護候補者」となるべき人物をピックアップします。
まっさきに思いつくのは、叔父叔母の兄弟、つまりあなたの親や別の叔父叔母です。しかし、そのような人たちは、独身叔父・叔母と同じく年を取っています。そのため、一世代下の甥・姪(あなたやあなたの「いとこ」)が候補者になると考えられます。
また、後々の相続争いを想定し叔父叔母の「相続人」についても確認しておきましょう。
ステップ②:叔父・叔母にやってもらうこと整理
叔父・叔母に「やってもらうべきこと」を整理します。具体的には、①介護人の決定や、②介護費用・報酬の準備、法的担保などです。
ここが曖昧だと介護費用を負担したにも関わらず、遺産は相続人で平等に分割ということになりかねません。それは絶対に避けるべきです。
ステップ③:甥・姪のやるべきことの整理
甥・姪側のやるべきことを整理します。具体的には、①家族の承諾を得ること、②費用や報酬の確認、③その法的担保などです。
細かな費用の算定などは【後編】で詳しく解説しています。
【実例】独身叔母の面倒は誰が見るのか
ステップ①である「人間関係の整理」について、私の親族を具体例として解説します。
人間関係の整理ポイント
まずは、叔母との人間関係の整理から始めます。これにより、誰が介護候補者となるのか、誰が相続人なのかが分かります。整理する項目は、以下の4つです。
【人間関係の4つの整理ポイント】
- 血縁関係の整理
- 介護候補者のピックアップ
- 叔母との人間関係の整理
- 叔母の「相続人」の確認
①血縁関係の整理
私の母方の血縁関係について解説します。私の母は3人兄弟です。兄と妹がいます。兄(叔父)は既婚者なのですが妹(叔母)は、生涯独身です。
叔母は、現在70代で今はまだ元気で頭もハッキリとしていますが、将来、誰が面倒を見るのか?が親族内での大きな課題です。
叔母との人間関係を分かりやすくするために家系図を作成しました。( )表示は私から見た親族関係です。
【私の母方血縁関係】
- 祖父母はすでに他界
- 母には兄(既婚)と妹(独身・70代)がおり、いずれも存命
- 母の兄(叔父)には子供が2人いる(甥A,B)
- 母には子供が2人いる(私、弟)
- 甥A、私、弟は既婚で子供がいる。甥Bは独身
【母方の家系図】
②介護候補者のピックアップ
血縁関係の整理が終われば、次に介護候補者になるべき人物を考えていきます。
残念ながら母の兄(叔父)は、数年前に脳梗塞を患い半身不随で自身が介護を受けている立場です。とても妹(叔母)の面倒を見られるような状態ではありません。
よって現状、叔母は私の母をアテにしているようです。しかし、母とていつ自身が要介護になるかもわかりません。そうなった場合、叔母が頼る相手は「甥A,B、私、弟の誰か」となります。
【叔母が考えている介護候補者】
- 第一候補:私の母親
- 第二候補:甥の4人のうちの誰か(甥A,B,私,弟)
③叔母との人間関係の整理
叔母と4人の甥(甥A,B、私、弟)の人間関係ですが、私の弟と叔母との関係は最悪です。私の弟は叔母を嫌っています。
私も含めた他の3人との関係は良好です。よって、実質的に叔母が頼れるのは3人(甥A,B、私)のうちのいずれかと考えられます。
【叔母が頼るべき候補】
- 第一候補:私の母親
- 第二候補:甥A,B,私の3人のうちの誰か
④叔母の相続人の確認
叔母の相続人について確認しておきます。独身の叔母には子供がいません。また父母(祖父母)も他界しているため、叔母の法定相続人は兄(叔父)、姉(母)の2人となります。
また、1代限りの代襲相続があるので、兄、姉が亡くなったあとは子供である甥A,B、私、弟の4人に相続権が引き継がれます。
叔母が自分自身で最後まで面倒を見るという手段もある
叔母が親族には一切頼らず、「親族以外の第三者」に面倒を見てもらう手段を模索することも可能です。
しかし現状、叔母にはそのような考えはなく母もしくは甥の誰かに自分の最後を託したいようです。
叔父・叔母にやってもらう3つのこと
あなたの親類にいる独身叔父・叔母が自身の最後を「あなたを含めた甥姪の誰か」に託そうとしているのであれば、事前に以下のことをやってもらいましょう。
すべてのスタートはこの準備が整ってからです。独身者(叔父・叔母)が「誰かに最後を託す場合」の事前準備としてやるべきことは、次の3つです。
【独身の叔父・叔母がやるべきこと】
- 終活
- 託すべき相手の決定
- 法的手続き
①終活
一般的な終活と同じです。銀行口座、保険、自宅等の財産を書き出して託す相手に知らせる必要があります。
その他、入院を希望する病院、入りたい施設、葬式やお墓、納骨の話もあります。まずは、自分の希望をまとめましょう。
【終活の項目】
- 銀行口座、保険口座の情報や実印、証書の場所など
- 入りたい施設の希望
- 葬儀の方法、埋葬方法、お墓のことなど
②託すべき相手の決定
独身叔父・叔母に自分の最後を託す相手を決めてもらいましょう。しかし、私の叔母のように「私はまだ元気だから」と油断して、この辺りを曖昧にして先伸ばしする人が多いと思います。
よって、甥姪の立場からすれば「万一、自分にバトンが回ってきたときのこと」を想定しておきましょう。
③法的手続き
独身叔父叔母があなたに最後を託すとしても、口約束の域を出ない可能性もあります。この部分を法的に固めておかないと将来「介護する側(あなた)」に不利益が生じる可能性があります。
とくに財産管理について問題がないように手続きをしておく必要があります。行うべき手続きとして、次の3つの候補があります。
【法的手続きの候補】
- 後見人制度の活用
- 養子縁組
- 遺言書の作成
法的手続きについては、【後編】で詳しく解説しています。
甥・姪がやるべき3つのこと
独身親族から最後の世話を託される甥・姪側(受ける側)がやるべきことは、次の3つです。
【甥・姪がやるべき3つのこと】
- 家族の了承を得ること
- 費用・報酬の確認
- 費用・報酬の法的担保
①家族の了承を得る
叔父・叔母の面倒をみると決めた場合、最初にすべきことは、家族の了承を得ることです。
主に配偶者(夫・妻)の了承となります。配偶者の了解を得られないまま話を進めると、最悪「家庭崩壊・離婚」の危機に陥ります。
②費用・報酬の確認
叔父・叔母側に介護等に必要な預貯金はあるのか。受ける側の最大の関心ごとが費用面です。
亡くなるまでの医療費や介護費、葬儀代、受け取る報酬等が十分に用意されているか確認しましょう。ここが不足すると最悪、自腹(持ち出し)となる可能性があります。
【考えられる費用】
- 医療費
- 介護費
- 葬儀代
- 墓地代
- 甥・姪への報酬
これらの費用が十分用意されているのか、確認する必要があります
③費用・報酬の法的担保
叔父・叔母に兄弟がいる場合、その兄弟が相続人となります。その兄弟が死亡している場合は、甥・姪が相続人になることは書きました。
叔父・叔母から「謝礼は私の遺産から受け取ってほしい」といわれていても、遺言等で法的に担保されていなければ「遺産は相続人全員で均等に分配」となります。
この点をしっかりと抑えておかなければ叔父・叔母の世話をしたにもかかわらず、一切の世話をしなかった、いとこと同額のお金しかもらえないということもあります。
【叔母より先に私の母、叔父が亡くなっていた場合】
叔母が遺言書を作成していなければ叔母の遺産は「甥A,B、私、弟」の4人で均等に分割することになります。
最後の世話をした人が損をしないように「遺言書の作成」などあらかじめ手を打っておく必要があります。
この部分については、【後編】で詳しく解説します。
受ける側(甥・姪)のリスク
独身者(叔父・叔母)から最後の世話の依頼を受ける側(甥・姪)のリスクについては、次の2つが考えられます。
【受ける側のリスク】
- 費用の不足
- 自分の親の介護との両立
①費用の不足
叔父・叔母があらかじめ自身の最後のために用意していたお金が足らなくなるリスクです。具体的には、予想以上に医療費がかかった、思っていた以上に長寿だった、などです。
叔父・叔母から最後を託された場合、費用については十分に確認しましょう。
【費用不足となる原因】
- 入退院を繰り返すことによる医療費の増加
- 重度の介護が必要となり費用の増加
- 思いのほか長寿による老人ホームの費用の増加
②自分の親の介護との両立
叔父・叔母は自分の親の兄弟なので、当然自分の親の介護等が必要となる時期と重複する可能性が高いです。
自分の親、配偶者の親に加え叔父・叔母の介護と3つの介護が重なるリスクがあります。自分の兄弟の人数、配偶者の兄弟の人数、住んでいる場所等を考慮し自分の負担を検討する必要があります。
まとめ
【前編】は以上となります。前編ではそれぞれの立場でやるべきこと、リスクなどをまとめました。【後編】では、実際に自分が叔父や叔母から最後の面倒を依頼された場合の対応について書きます。
【後編】はこちら↓