相変わらずな投資本界隈
久しぶりに大きな書店の投資コーナーに行ってみた。相変わらず「億」が、さも当たり前かのような景気のいいタイトルの本ばかりであった。「億り人」は、すでに一種のキーワードとなっている。すごく身近な存在だ。ある意味「億」の存在が、一番軽いのが株の世界ではなかろうか。
すご~く軽い「億」
どうして株式投資では、これほどまでに「億」が軽いのだろうか?例えば、自分がラーメン店を経営して億の売り上げを稼ぐ!となると非常に困難なことがイメージとして分かる。会社で億単位のお金(利益)を残そうと思えば、いくらの受注額となるのか・・・
そんな億を一個人、それも書店の投資本コーナーにふらっと立ち寄る、おそらく株の初心者が目指そうというのである。何かがおかしいと気づくべきだ。(本当に株で稼いでいる人は、そんな軽薄なタイトルの本は買わないだろう)
判断基準の無さを利用されている
なぜこのようなことが起こるのか?私の分析はこうである。「投資にはプロ階級というものがない。なので、利益の金銭感覚(相場観)が分からない」だから億といわれてもピンと来ない。一応、機関投資家というプロはいるが、その利益はハッキリとは公開されていない。分かったとしても、投資額が現実離れしていて参考にならない。
「億」という金額が、現実的なのか非現実的なのか、判断ができないのが投資の世界。
ゴルフ本は「分をわきまえている」
そして、ふと次のことを思った。書店のゴルフコーナーに行って、「あなたも-5(ファイブアンダー)で回れる本」なんて本が売られていたら、おそらく誰も買わないだろうと。理由は、現実的ではないから。実際にAmazonで「ゴルフ アンダーパー」の本を探してみたが1冊も出てこなかった。
ゴルフを知らない人へ補足すると、
・18ホールをすべて「パー」で回ったとして、スコアは72となる
・ゴルフはこの「72」という数字を基準として、上手い下手を語る
・数字が小さい方がゴルフは上手い(ギネス記録は55)
・アンダーパーとは、スコアが72以下となること
・プロならアンダーパーは当たり前
・アマチュアは「めざせ100以下」というレベル
・アマチュアで80とかなら、東大・京大レベル
ゴルフをやっている人ならだれでも、上記のような判断基準となる相場観を持っている。なので、-5(スコアで言うと72-5で67)がプロの領域だとわかっている。その結果、スコア100も切れない自分が、「スコア67なんて夢のまた夢、無理無理」となる。
ゴルフの世界には相場観がある。
アマチュアがプロを目指している
投資にはこういった判断基準となる相場観が無い。なので「億」とかブチ上げられても、「なんだか、いけそうな気がするぅ~」となってしまう。数はごくわずかだが、実際に到達した人もいるので、余計に説得力が出てきてしまう。
ゴルフではアマチュアは誰もプロを目指さないのに、投資では“誰もが”プロを目指そうとする。不思議な世界だ。まぁ、出版社からすれば、とにかく本が売れさえすればそれでいいので、相場観の無さを上手く利用して「億」という言葉で、個人を吊りまくっているのだろう。
逆に「年間50万」の投資本は無い
そしてなぜか、「NISA枠で毎年50万円稼ぐ」という類の本は無い。億に比べると額がショボすぎて誰も見向きもしないのだろう。だが、年間50万円といえば月額換算4万円の利益である。副業なら立派に胸を張れるレベルである。
「副業で毎月4万“確実に”稼ぐ方法」なんて本を出せば爆売れしそうなのに、投資では見向きもされない(笑)不思議である。
まずは「100切り」を目指す
とにかく、「億」がとんでもない数字だということを認識するところから始めよう。投資本に毒されすぎている。実際に、億を稼ごうとすると無理な取引が必要となって来る。取引量を多くするために信用取引でレバレッジをかけたり、ボラの大きい銘柄に手を出したりする。そして結局失敗する。
私も含めて、
・自分がアマチュアであること
・兼業であり投資で稼げなくても生活に困らないこと
・億を稼げなくても老後は心配ないこと
これらのことを認識して、まずは「年間50万の利益」を確実にキープできるよう努力すべきではないか。ゴルフでいう「100切り」である。もっとも、これとて簡単にできるものではない。3年連続、年間50万の利益達成!「億」とかほざくのは、それからだ。