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「田中角栄 魂の言葉88」偉大な政治家の残した言葉

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この本を読もうと思った理由

 私がこの本を読もうと思った理由は、田中角栄に興味があったからだ。きっかけは、YouTubeである。最近YouTubeで田中角栄の名言的なショート動画がやたらとあがってきてそれを見たのが興味を持ったきっかけである。

 田中角栄と私の人生は年代的には被っているが、私が生まれる前や政治に興味のない子供の時に活躍していた人物なので、まったく記憶が無い。かの有名なロッキード事件に関してもほとんど内容を知らない。

気に入った名言を紹介

 本書と内容は被るが、同時に「田中角栄 100の言葉」という本も読んだ。いずれも、角栄の名言を集めたものである。その中で私の心に響いたものや、気に入ったものを紹介していく。

田中角栄 魂の言葉88(昭和人物研究会、2016年6月、三笠書房)

田中角栄 100の言葉(別冊宝島編集部、2015年1月、宝島社)

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すべての責任は私が取る

「できることはやる。できないことはやらない。しかし、すべての責任は私が負う。」

 田中角栄が、大蔵大臣に就任した時に官僚に対して行った挨拶である。責任を取ることを恐れて何もできない政治家、役人において、ここまで言い切るのは凄いと思う。民間でもここまで言える上司、社長はどれぐらいいるだろうか。

手柄と責任

「手柄は全部連中(官僚)に与えてやればいい。泥は当方が被る」

 上記の責任と同じ考え方。結果が果たせれば手柄など、どうでもいいということだろう。器の大きさが感じられる。他人の評価よりも結果という事実を重視した考え方だ。

お辞儀をする側

「君は今日からお辞儀をする側に来たのだ」

 新たに雇った秘書の早坂茂三が初日に角栄に言われた言葉。今まで新聞記者として、ふんぞりかえっていた早坂に、今日から有権者に対してお辞儀をする側に来たのだということを教えている。

時間厳守

「時間を守れん人間は、なにをやってもダメだ」

 田中角栄は、時間に非常に厳しかったとのこと。それは、自分に対しても他人に対してもである。政治家の先生ともなれば、「ちょっとぐらい相手を待たせてもイイだろう」と慢心の心が出てきそうだが、時間厳守であった。

約束は守れ

「約束したら必ず果たせ。できない約束はするな」、「借りたカネは忘れるな。貸したカネは忘れろ」

 田中角栄は、「約束=信用」ということを重視していた。また、どんな些細な約束であっても頼んだ方は絶対に覚えており、約束を守らなければ恨まれることも承知していた。お金も人とのもめごとの種となる。貸したカネは忘れるぐらいの覚悟と器の大きさが必要ということか。

働いてから休む人間

「世の中には、働いてから休む人と、休んでから働く人がいる。お前は、働いてから休む人になりなさい」

 田中角栄が15歳で故郷を出て上京する時に、母フメから言われた言葉。田中角栄の言葉ではないが、私はこの言葉が一番心に響いている。昭和のモーレツ(死後)会社員ではないがやはり、自分がやるべきこと(義務)は、きちんと先に片付けたい。

横着な人間はダメだ

「世の中には人のために働かないで文句ばかり言う横着な人間が少なくない。こういうのはダメだ。使い物にならない」

 先ほどの言葉とは正反対の内容である。最近の世の中は、自分が欲しがるばかりの人間が大勢いる。残業は嫌だ、有給は100%取得したい、自分の権利ばかり主張する風潮はますます増大している。それに見合うだけの義務は果たしているのだろうか。権利と義務は表裏一体、一対である。権利だけを主張することはできない。

返事は必ず出せ

「必ず返事は出せ。例え結果が相手の思い通りにならなかったとしても、「聞いてくれたんだな」となる」

 人から頼まれごとをされた際には、必ず自分から返事を出す。たとえそれが、相手の希望を満たせない結果だとしても。言いにくい内容であれば、人は「相手から聞かれるまで待っておこう」となってしまう。しかし、相手は一日千秋の思いで待っているかもしれない。返事は自分から出す。それが信頼関係を築いていく。

初めに結論を言え

「初めに結論を言え。理由は3つまでだ。3つで収まらない大事は無い。」

 徹底的な合理主義者であった田中角栄のモットー。グダグダの冗長を嫌った。これは、現代でのメール等での報告でも非常に役立つと思う。まずは結論、そして理由なり経過を箇条書きで簡素に伝えるのが良いと思う。

カネの渡し方

「人にカネを渡すときは頭を下げて渡せ。くれてやると思ったらそれは死にガネだ」

 金権政治と言われた田中角栄だが、お金の使い方がそれだけ上手かったということである。自分が部下や後輩にご飯をおごる時も「今日は奢ってやっている」という気持ちが見え隠れしたら、それは相手には何も響いていないということである。お金を渡す側が頭を下げてどうか貰ってくださいという、とても難しいことだ。

グレーゾーン

「世の中は白と黒ばかりではない。敵と味方ばかりでもない。その中間のグレーゾーンが一番広い。真理は「中間」にある」

 どうしても、周囲を白か黒、敵か味方に分けてしまいがちな世の中にあって、その中間地点に着眼することは見落としがちだ。そして、その中間地帯が一番広いと認識することも重要である。物事は単純な二元論では片付けられないとある。

まとめ

 田中角栄といえば、ロッキード事件で汚職をした政治家というイメージが強い。私も本書を読むまではその程度の知識しかなかった。しかし、最終学歴が高等小学校(現在の中学2年程度)卒業で、総理大臣にまで上り詰めた人物である。

たたき上げの苦労人

 極貧、豪雪の新潟出身のたたき上げの人物である。29歳で政治家として初当選したが、その前は自分で建設会社を興し成功もしていた。そのような苦労人なので、非常に言葉に重みがある。また、他者への気配りも行きわたっている。今の苦労知らず二世議員などとは格が違う。

 優秀過ぎたために、アメリカの反感を買い「虎の尾を踏んだ」ということで、ロッキード事件でハメられ失脚に追い込まれてしまった。石原慎太郎の著書「天才」も読んだが、当時田中角栄が選挙のために用意した資金は300億円。そのような額を動かせる人間が、たった5億のはした金でなびくわけがないと思う。

 現在にも田中角栄のような傑人が出てくれば、この鬱屈とした日本も過去の力強さを取り戻すことが出来るかもしれない。