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「がんはなぜできるのか」生活習慣の改善でガンの60%は予防できる?

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この本を読もうと思った理由

 私がこの本を読もうと思った理由は、50代という年齢的にも、いつ癌になってもおかしくはないと考えているからである。癌に対する知識があれば自分や妻が、親などの身内が癌になったとしてもある程度は冷静に対処できるのではないかと考えたからである。

「がん」はなぜできるのか(国立がん研究センター研究所、2018年6月、ブルーバックス)

この本をお薦めする人

 この本をお薦めする人は、まだ癌にかかったことが無い人となる。なぜ癌が発生するのか、原因や予防方法を知っておくことは役に立つ。また、浸潤や転移の仕組みについて知っておけば実際に癌になってしまった時に、知識不足による過度な不安に陥ることも防げるであろう。何よりも、がんを予防しようという啓蒙活動に役立つ。ただし、内容は専門的で素人には理解が困難な部分もある。

日本人の2人に1人は本当

 癌は、1981年以降日本人の死因1位の座を独占し続けている。現在の日本人が癌にかかる確率は、男性で62%、女性で46%である。ほぼ2人に1人が生涯で一度は癌にかかるということである。もっとも、平均寿命が40~50歳だったころは「癌にかかる前に他の原因で死亡していた」ので、「昔に比べ癌が増えた」というわけではなさそうである。

老化と癌の関係性

 特殊な事例を除き癌は高齢者がかかるもの、という漠然としたイメージがある。これは正しい解釈で、本書では「人は年齢を重ねるごとに発がんリスクが上がるという歴然とした事実が存在する」と言い切っている。残念ながらこの事実は受け入れるしかない。

なぜ年をとると癌になりやすいのか

 この答えも本書では記されているが、少し専門的である。簡単に言うと、「老化を起こした細胞が加齢とともに体内に蓄積され、この老化細胞が癌の間接的原因になる」というものである。癌の原因が体内で徐々に増加し続ければ、いつかは癌が発生するという感じだろうか。

癌の原因と予防

 私自身も含め、多くの人が知りたいのが「どうしたら癌を防げるのか(予防)、そして原因は何なのか?」である。本書では、癌の遺伝的仕組みや転移の仕組みなども紹介されていたが、とにかく「原因と予防」をメインで書くことにする。

癌は生活習慣病

 「癌は遺伝的要因の病気と思われがちだが、実際には生活習慣のリスク要因が圧倒的な割合を占める」と書かれている。「ウチは癌家系だから。。。」というのは、一部では確かにあるが、大半は本人の自堕落な生活によるものである。言い換えれば、生活習慣を改善すれば、癌は予防できるということである。

リスクを完全に排除することは不可能

 一方で、生活習慣による癌のリスクを完全に排除することは「不可能」とも書かれている。理由は、様々なリスクが複雑に絡み合い、なおかつ積み重なった結果、癌発症という結論に至るからである。また、そのメカニズムは完全に解明されていない。例えば、タバコひとつ辞めたからといって癌の脅威が完全になくならないのは理解できると思う。

タバコと食事の改善で60%防げる

 1996年と約30年前の古いデータではあるが、ハーバード大学の研究結果が記載されており、癌のリスクとなる生活習慣はタバコが30%、食事が30%とのこと。食事の具体的な内容については、記載されていなかったが別の項には塩分(胃がん)、飲酒(食道がん)の関係性が分かっている。タバコと食生活を改めると60%もの癌予防になると、ハッキリと書かれている。

日本人特有の癌のリスク

 上記は世界の人々を対象としているが、日本人は少し割合が違うようだ。日本人男性の癌リスク上位は、タバコ30%、感染23%、飲酒9%となっている。日本人女性は、感染18%、喫煙5%、飲酒3%となっている。

感染による癌リスク

 日本人の特徴として、「感染による癌」が多いと書かれている。先進国では感染による割合は9%のところ、日本人は20%と突出して多い。感染とは、具体的には肝臓がんの肝炎ウイルス、胃がんのピロリ菌などが挙げられている。女性の場合は、子宮頸癌の原因として、ヒトパピローマウイルスがある。

 このように癌はある程度原因が分かっているので、それらに適切に対処すればリスクを大きく低減させることが出来る。もちろん、老化による免疫力の低下による癌細胞の見逃しや、遺伝的要因、放射線、化学物質も原因となり得るのだろうが、こういったことは防ぎきれないのでやれることをやるしかないだろう。

癌に関与する生活習慣

 どのような生活習慣が、どのような癌に関連するのかが紹介されている。
・たばこ、酒:多くの癌で「確実」に関連する
・肥満:肝臓がん、大腸がんで「ほぼ確実」に関連
・食塩、塩蔵品:胃がんで「ほぼ確実」に関連
・運動不足:大腸がんで「ほぼ確実」に関連
・野菜と果物不足:食道がんで「ほぼ確実」に関連

 これらを知り対策するけでも、相当な予防効果になると思う。これらの最新の情報は
こちら「エビデンスの評価」で確認することが出来る。または、「国立がん研究センター、エビデンス」で検索。

まとめ

 まとめると、加齢による癌リスクの増大は防げない。しかし、生活習慣による癌リスクは自分の努力により年齢に関係なく低減させることが出来る。タバコと酒をやめるだけで多くの癌を予防することが出来る。運動する、塩分を控える、野菜や果物を積極的に食べる。どれも難しいことではないはずである。

 やるかやらないかは、自分次第である。