この本を読もうと思った理由
私がこの本を読もうと思った理由は、このタイトルである。ただの大失敗ではない。メガトン級の大失敗である。「メガトン級」とか、もはや昭和世代にしか通じない死語に近いチープな表現であり、余計に親近感がわいた。では、実際に面白かったのだろうか。
メガトン級「大失敗」の世界史(トム・フィリップス、2023年3月、河出書房新社)
残念だった点:読みにくい
色々と面白ネタを知ることができた。ただ、残念だったのは、読みにくい。なんの前振りもなく、章分けもなく次々と別の話題に話が移っていくのだ。頼むから小見出しだけでもつけてもらえないだろうか。読んでいて次の行から急に話題が変わって、「え、今の話もう終わり?」みたいになる、そこが残念であった。以下に私が興味を引かれた内容をまとめてみる。
安易に環境を変えたツケ
アラル海
アラル海(という名の湖)の環境破壊は有名である。何度となくテレビでも取り上げられている。元は68,000k㎡(日本の東北)ほどの大きさのまさに、「海級の大きさ」だったものが、一時は約10分の1まで縮小している。湖の塩分濃度は10倍に跳ね上がり、かつては漁業が盛んだった湖で生き物は死に絶えた。。。
どうしてこうなったか?ソ連が綿花を大量に作りたくて、アラル海に流れ込む川の流れを人為的に変えたからである。蛇口の水を止めれば、いずれバケツの水が干上がることは中学生でも分かるのに大国がそれを分からなかった。もしくは、分かっていても独裁者には誰も何も言えなかった、というのが正解か。。。
安易に生き物を移動させたツケ
オーストラリアのウサギ
1895年、1人のイングランド人がオーストラリアに移住した。彼は、祖国イギリスのハンティングが懐かしく、甥に「たった2匹」の野ウサギを送ってもらった。(ネットで調べたところ24匹との記述もあり)少し時が経ち、25年後の1920年にオーストラリアのウサギは、なんと100億匹に増えていたのだ!
「ホンマかいな?」と疑いたくなるが、日本のアメリカザリガニ、ウシガエル、ブラックバス、ブルーギルを考えると、納得がいってしまう。猛烈に増殖したウサギは、あらゆる草などを食べつくしてオーストラリアの在来種を危機に陥れた。
毛沢東のスズメ駆除
毛沢東は、「ネズミ、蚊、ハエ、スズメ」を撲滅すべく、“四害駆除運動”なるものをやった。最初の3つは、まぁ分からないでもない。最後のスズメは、ただ穀物を食べるという理由から、ターゲットにされたようだ。計算上では、100万羽のスズメを駆除すれば6万人が飢えから救われるというものだった。
そして中国では国民総出で、1億羽というスズメの大虐殺を行った。この結果、計算上600万人が飢えから救われることになる。(ヤッタね!)結果は、3000万人の国民が飢えで餓死したのだ。アホ丸出しである。なぜ、この様な餓死者が出たのか?本来、スズメが食べるはずだったイナゴが生き残りまくりで、大繁殖→蝗害となって穀物を食い荒らしたからである。
ソ連のアラル海といい、共産主義のたった一人の独裁者の安易な思い付きで、国民全員がとばっちりを受けるのはどうなのか。もっとも被害は人間だけではないが。。。
テクノロジーの失敗
優生学
フランシス・ゴルトンなる人物は、かの有名なダーウィンのいとこであった。彼は天才だったのだが、たった一つの間違いで歴史に悪名を残す結果となった。「優生学」という考え方を思いついたことだ。いわゆる遺伝である。
「天才は、遺伝によってのみ生まれる」と考えてしまったのだ。人間の性質に、生まれてからの外的要因は必要ないと結論付けた。その結果、「優れた人間を増やすにはどうすればよいか?」という問いが、どういう答えに行きつくかは容易に想像ができる。
導き出された答えは、
①優秀な人間同士で子作りをする
②劣った人間に子供を作らせないようにする
という、小説や漫画にありそうなディストピア感満載の恐ろしい考え方が、世界に広まった。特に②の考え方が広く実践された。その最たるものが、ナチスドイツのユダヤ人大虐殺である。
もっとも、アメリカでも日本でも「優生学」という考えは法律にも受け入れられた。日本では1948年に「優生保護法」なるものが成立し、強制不妊手術を実行している。1996年と、ごく最近まで法律上は継続していたのは他人事ではない。
有鉛ガソリンとフロンガス
アメリカの科学者、トマス・ジミリーは「2度、最も地球環境を破壊した人物」として、残念な評価を受けている。それは、有鉛ガソリンとフロンガスの発明である。
私は車に乗らないのでよくわからないが、現在は無鉛ガソリンが当たり前であるが、1975年までは、普通に自動車に有鉛ガソリンが使われていた。その名の通り、ガソリンに鉛を混ぜている。これはノッキング防止効果があるらしい。だが、「鉛」は人体に多大なる悪影響を与える。
彼が悪名高いのは、鉛が人体に悪影響を及ぼすことを知っていたにも関わらず、企業の利益優先のために黙認したことである。彼は後にフロンガスを発明するが、これに関しては当時オゾン層の存在やその重要性、フロンによって破壊されることは、まったく知られていなかったので致し方ない面もある。
まとめ
ここで紹介した他にも、人類の様々な”やらかし”が掲載されていた。今でこそ振り返って笑いのネタに出来るのかもしれないが、実際に自分がその渦中にあることを考えると、なかなかに厳しい。
確実に言えることは、人間はそこまで賢くないということだ。なので、1人の人間の意見だけで行動するのではなく、第三者的目線からもチェックを行い本当に実行しても大丈夫なのか、検証する必要があるだろう。今の時代ならAIなどがそうである。