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「リベラルとは何か」リベラルの反対は? 右とか左とかの話

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この本を読もうと思った理由

 私がこの本を読もうと思った理由は、「リベラル」という言葉について知りたかったからだ。きっかけは、2024年の兵庫県知事選のやり直し選挙である。斎藤知事が再選したときに、「リベラル派云々」という記事を見て、「リベラル派ってなに?」と思った。なんとなく政治的思想に関する言葉、ということは分かるのだが、より詳細に知りたかった。

リベラルとは何か(田中拓道、2020年12月、中公新書)

リベラルとは

 本書の冒頭で現代のリベラルについて、次の様に定義されている。
リベラルとは、
①価値の多元性を前提として、
②すべての個人が自分の生き方を自由に選択でき、人生の目標を自由に追求できる機会を保障するために、
③国家が一定の再配分を行うべきだ
と考える政治的思想と立場

と書かれている。①と②については、イメージできるが③の再配分とは何か、がイマイチよくわからない、というのが本書を読む前の私の心理である。

本書を読んだ後

 本書を読んだ後に「リベラルとは何か」について、私としては次の様な受け取り方をした。

リベラルとは

 選択の自由と平等を支持する考え方。そのためには、国家による配分=福祉(=支援:生活保護や失業保険、年金など)が必要と考える。「国家主義」という考え方。左派とも呼ばれる。

保守とは

 リベラルの対極に位置するのが、保守である。こちらは、「市場主義」という考え方で、各々自分の実力で儲ければいい、と考えている。いわば、実力主義、弱肉強食の世界を望んでいる。国家の役割は最小限とされる。右派とも呼ばれる。

リベラル、保守の概念と主な支持層

 ここから本書の内容について説明する。本書ではリベラルと保守について、以下のようにまとめられている。また、どのような階級層が、それぞれの支持層となりやすいかについて、まとめてみた。

リベラル

・社会秩序において、個人の自由と平等が最大限に尊重されるべき
・集団内では皆、平等
・年齢や性別による差別を認めない
・伝統(これまでのやり方)に縛られることは良くない
・自分たちの生き方、社会の在り方を自己決定できるのが望ましい

保守

・社会秩序は、階層と権威によって成り立っている
・古くからの伝統や慣習を重視、これらを見直すことは認められない
・上下関係重視
・属性(生まれ、民族、性別)による仕分け
・個人よりも過去から引き継がれた集団の方が重要

インサイダーとアウトサイダー

 本書では保守とリベラル、それぞれの支持層を“形成しやすい区分”として、インサイダーとアウトサイダーという視点からの区分と、職業別の視点からの区分が紹介されている

インサイダー

 インサイダーとは、安定した雇用を保証され、社会保障によって守られている人々。多くは、男性の正規雇用労働者となる。こういった人々は、これまでの風習や体制を守ることを好み、保守支持層となる。

アウトサイダー

 アウトサイダーとは、断片的で不安定な労働に就く人々とされている。具体的には、スキルや経験の乏しい若者、女性、失業経験者などが挙げられている。これらの人々は、インサイダーに比べて社会保障が低いため、さらなる保証の充実を求めリベラル支持層となる。

保守になりやすい職種

 保守になりやすい職業として、工場労働、事務労働、上からの管理が必要となる業務とも書かれている。現代なら、サラリーマン全般と考えていいだろう。

リベラルになりやすい職業

 リベラルになりやすい職業として、教育、医療、福祉、文化などに関わる人々、業務の中身がハッキリと定まっておらず、各自の裁量が大きい職業とある。

 たしかにサラリーマンが、年功序列や終身雇用を保持したい気持ちは、サラリーマンである私自身もよく分かる。これは後に出て来る、日本でのリベラルにも関係している。

排外主義ポピュリズムの台頭

 リベラルに対する保守以外の敵対勢力として、本書ではここで「排外主義ポピュリズム」なるものが台頭してくる。“排外主義”とは簡単に言うと、外国人や移民・難民など自国民以外を排斥しようという考えである。そしてこれがリベラル派への脅威となる、と書かれている。どういうことなのか?

リベラルのジレンマ

 これはリベラルのジレンマとして書かれているが、次のことを考えればよく分かる。

 「日本は毎年、貧困国に多大なる支援を行っている。例えばA国には、今年50億円の支援を行った。リベラル的考えでは、これは推奨されるべき行いであるが、日本にも貧困層はいる。50億円の内、半分でも自国のために使うべきではないのか。」

 リベラル派が無差別に援助や支援を容認すると、それを負担する側(具体的には税の負担側=富裕層)からの反発を受け、その層からの支持を得られなくなる。これが「リベラルのジレンマ」と書かれている。仕事を頑張りすぎると、逆に支持が得られなくなるという、まさにジレンマだ。

現代日本でのリベラル

 本書では最後に、日本におけるリベラルについて触れられている。結論から言うと、日本のリベラルは少し外国とは違うと言わざるを得ない。

日本型雇用による福祉

 1980年以降も日本は福祉国家として発展しなかった。その国に代わり、人々の生活を保障したのが日本型雇用、いわゆる「終身雇用と年功序列」である。これにより、一億総中流という概念が生まれ、人々は満足していたのでリベラルの発展が進まなかった。その結果、現代まで続く保守派の自民党優位の政治が続いているのである。

 日本の場合、企業が福祉(雇用の安定)を保証していたので、誰も政権に対して保守だのリベラルだのを期待しなくてもよかったのだと思う。なので、私もこの年までリベラルという概念すら知らなかった。

近年のひずみ

 しかし、近年では自民党政権への不信が大きく募っている。それは、日本を取り巻く状況が大きく変わったからと書かれている。皆さんもご承知の、長引く不況、未婚率の上昇、少子高齢化、女性の社会進出、非正規雇用の増大などである。

 このように、現在では企業による雇用の安定(日本型雇用)が崩れつつある。その結果、自民党への批判、日本でのリベラル派の台頭により、ネットなどでもその言葉を知るようになったのではないだろうか。

まとめ

 最後にもう一度、私が理解したリベラルと保守について、そのメリットとデメリットも含めまとめてみる。この記事を書いている2025年初頭、アメリカのトランプ大統領がLGBTに関する規定を次々と撤廃している(選択の自由の制限)、こういう行動を「保守への回帰」というのだろう。今でなら分かる。

リベラル

 左派。個人の自由主義(多様性、LGBT等を認める)であり、それを達成するために国家による福祉と支援の充実を望む。貧困者や高齢者には、暮らしやすい世界となる。反面、そのような人たちを支援する財源が必要となり、必然的にそれらは税金となる可能性が高い。当然、税を負担する側である、中流層以上の人々からの支持は得にくい。行き過ぎれば、すべてを国家の所有下とする共産主義となる。

保守

 右派。市場自由主義であり、需要と供給の市場メカニズムに任せればよく、国家は市場に介入すべきでないという考え。各自の実力次第で、いくらでも儲けることができる弱肉強食の世界。資本主義の極み。反面、弱者は自己責任論で片付けられ、救いの手は差し伸べられず、貧富の差がますます拡大することになる。現代の日本はどちらかというと、こちらが主流ではないだろうか。