お金の話

「大暴落の夜に長期投資家が考えていること」答え:狼狽売り以外のこと

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この本を読もうと思った理由

 私がこの本を読もうと思った理由は、久しぶりに投資関係の本を読みたいと思ったから。「悲観で買って楽観で売る」というのが心理的には困難ではあるが、株式投資の本質だと思っている私としては、本書から少しでもその断片を学ぶことが出来ればと思った。

この本をお薦めする人

 この本は、毎度の暴落を恐怖で見送ってしまい、後で悔しい思いをする人に役に立つだろう。暴落は必ず来ること、それまで待つことを学べる。特に近年は、2024年8月の暴落と2025年4月のトランプ関税暴落と、1年のうちに2回も暴落が来た年であった。これらの暴落で悔しい思い、または恐怖で損切りしてしまった人は読むべきかもしれない。

本書の結論

 長期投資家が大暴落の夜に考えている、結論は次の3つである。
①以前から目をつけていた銘柄が安くなったから買おうか
②何もしないという選択肢はどうだろう
③いったん冷静になる=狼狽売りはやらない

大暴落の夜に長期投資家が考えていること(ろくすけ、2025年1月、星海社新書)

暴落はチャンス

 本書では、2024年8月5日の大暴落の事が書かれている。この時、著者が考えていたことは、「当然買いのチャンス」である。理由として、当時暴落の原因と言われていた、日銀の金利引き上げや米国の雇用統計の悪化などが、実態経済に及ぼす影響は「ほとんどゼロ」と判断したから、とある。

 あれから約11ヶ月が過ぎた2025年6月末になって“冷静”に考えれば、日銀が金利を上げたぐらいで日本経済が沈没するなら、過去何十回以上も沈没しているわ、と言えるだろう。しかし、リアルタイムであの数字(株価)を見さされると冷静さを保つことは、なかなかに難しい。

 そして2025年4月にも多くの人が同じリアクションをした。だからこそ、株をやっている人の9割は負けているといわれるのだろう。

 今なら「何この下げバカなの?買いまくるわ(笑)」なんて簡単に言えるが、では実際にこの日あなたは買えただろうか?自分に聞いてみよう。買えたという人は株で安定的に稼いでいる人だろう。

暴落のメカニズム

 暴落は、かの有名なブラックマンデーに始まり、これまでの歴史で何度となく繰り返されてきた。なぜ暴落はこうも繰り返すのか?本書では、それは人の欲望と恐怖が株式市場を作っているからとある。

 この部分は私が常に書いている悲観と楽観の事が書かれていた。私が手元に残している数少ない投資本、「投資で一番大切な20の教え」が引用されていた。この振り子の動きによって暴騰と暴落はこれからも繰り返されるのである。

暴落時に売買が成立する理由

 暴落時であろうとも、あなたは自分の持ち株を損切りすることができる。一歩立ち止まって、なぜ損切りできるのか考えたことはあるだろうか?システム上、売れることになっている、は正確な答えではない。「誰かが」あなたから買い取っているからあなたは売れるのである。誰も買い手がいなければストップ安になるはずだ。

画面の向こうには誰かがいる

 「デイトレード」の本に書かれているが、株式の売買とは「どこかの倉庫に山と積まれた株券があり、そこから自分が欲しいだけの枚数を取ってきている」のではない。取引画面の向こうには必ずあなたと取引をしている相手がいる。必ず売り手がおり、あなたはその人から株券を買うのだ。

笑っているのは誰だ?

 あなたの取引相手は今、どんな顔をして取引をしているか考えたことはあるだろうか?相手が余裕綽々でニヤついているのであれば、おそらくあなたは損をすることになるだろう。相手が泣きそうな顔をしているのであれば、あなたは利益を手にする。重要なことは、大勢が泣いている時に自分が笑えるかである。

暴落時に買い向かうためには、

 暴落時に買い向かうためにあらかじめやっておくこととして、本書では次の2つが紹介されている。
・買う企業(銘柄)を決めておく
・その企業の適性株価を自分で決めておく

 あらかじめ自分が見込んだ企業で、なおかつその企業の(自分なりの)適正株価を分析しておく。そうれば、暴落時にその株価を下回った場合、躊躇なく(むしろ嬉々として)買えるという理屈である。

 本書では、ファンダメンタルズを用いた著者自身の株価分析の方法が書かれていた。興味のある方は、自身で読んでもらいたい。私はどちらかと言うとテクニカル派なので、この部分はあまり響かなかった。4000社もある上場企業を1社1社手作業で、企業分析するなど兼業にはとても無理である。また、ファンダメンタルズの的中率もそこまで高くないと考えている。

投資スタイルには様々な流派がある

 私は投資(投機でもいい)スタイルには、様々な流派(やり方)があると思っている。「2大流派」として、ファンダメンタルズ派とテクニカル派がある。そこに、長期投資やデイトレなど時間軸の違いを組み合わせ様々な流派が混在している。これらは各自が各々自分のライフスタイルや目標とする利益の額、自分の性格などによって取捨選択して作り上げていくものだと思っている。

 よって、唯一無二の投資スタイルというものは無い。その証拠に、デイトレや企業業績無視のテクニカル手法で億を稼いだ人もいるし、本書の著者の様に企業分析で億を稼いだ人もいる。どちらが正解という概念は無い。そして、各流派は部分部分では他の流派と重複する。

自分に合うスタイルが重要

 誰かにアドバイスを貰ってその考えに転向できればいいが、無理して合わす必要はないと私は思っている。その結果、利益が減ったとしても人間苦痛に感じることは継続できない。私はコツコツと企業分析をするのは面倒くさい。その結果、儲けのチャンスが減ったとしてもそれは私がズボラをした代償だと思っている。

 利益についても、50代の私に残された時間で「億」を稼げるとは思っていないし、リスクを取ってまで稼ぐ必要もないと思っている。仕事を辞めて自由になりたいと思うほど今の仕事がつらいわけではないのでFIREする必要もない。このように、個々人により懐事情や投資事情は異なるので、身の丈に合ったやりやすい方法を選択すればイイのではないかと思う。

のめりこめるのは凄い力

 人間何事も、のめりこめることがあるのは凄いと思う。ファンダメンタルズで資産を作る人は企業分析を苦とも思わないし、むしろ楽しみとしている部分もあるだろう。なんでもマニアが強いということだ。残念ながら私にはその素質は無い。