「豊饒の海(二)奔馬」前作と真逆の熱血青年物語
転生の物語
この小説4部作は、転生の物語である。本編の主人公も前作のボンボンの生まれ変わりという設定である。しかし、本編の主人公は前世の記憶を引き継いでいないため、本人は転生を自認していない。ではなぜ、ボンボンの転生だとわかるのかというと、身体的特徴(具体的には左わき腹に特徴的なホクロがある)が前世の肉体と一致することで、それと読者に匂わせがある。
そして、この連綿と続く転生の物語の見届け人として、初代主人公であるボンボンの友人の本多という人物が設定されている。
豊饒の海(二)奔馬 (三島由紀夫、2002年12月、新潮文庫)
あらすじ
前作の主人公ボンボンが死んでから18年が経過し、時は昭和7年。本作を通じて傍観者役となる本多もすでに38歳となっている。職業は裁判官である。ひょんなことからこの裁判官が、ボンボンの生まれ変わりである血気盛んな剣道青年と出会う。
前回は、下の緩いボンボンだったのだが、今回は超絶熱血硬派漢に転生している。早い段階で、ボンボンと同一の身体的特徴が若者にあることを見つけるが、半信半疑な裁判官。
剣道少年は、神風連の乱(明治時代に熊本で起こった実在のクーデター事件)に心酔しており、悪い意味で影響されている。今の軟弱化する日本に対して天誅が必要だと考えており、同様の志を持つ若者を集めて機会を探っている。同時に、事が終わればさっさと腹を切って自刃するつもりでいる。
綿密な計画を進める同志一同だが、決行の2日前に何者かの密告により、全員が逮捕されてしまう。これを聞いた本田はこの若者を救うべく裁判官の職を辞して、弁護士となり彼の弁護を引き受けるのである。誰が裏切ったのか?主人公たちはどうなるのか?そして、裁判の行方は・・・
感想
前作の恋愛モノとは一変、純粋すぎる若者の猪突猛進を扱った内容となっている。私的には前作よりも数段面白いと感じだ。薄々この計画は失敗するんじゃないかと思いながら読んでいたが、「やはり」という展開だった。だが、そこからどういう結末となるのか?というのが気になり最後は一気に読んでしまう。裁判中の描写があるのも現代風で意外だった。
