この本を読もうと思った理由

 私がこの本を読もうと思った理由は、お金に対して逆の意見も聞いてみたかったからである。少子高齢化で将来が見通せない現代、定年が迫った我々50代は言うに及ばず、若者ですら貯蓄に気を使っている。そんな風潮が広がる中、「貯金なんてするな、お金をどんどん使え」という意見の人もいるのである。

 どのような考えに基づきそういう発想に至ったのか、また真逆の意見を聞くことで新たな気づきもあるかもしれないと思ったのが、この本を読もうと思った理由である。

あり金は全部使え(堀江貴文、2025年11月、マガジンハウス)

本書を読んだ感想

 本書を読んだ感想として、著者の意見に「それは分かる」とほぼ完全に同意できる部分と、「ちょっと違うんじゃないかな」とまったく同意できない部分にハッキリと別れることが多かった。なので同意できる内容、同意できない内容に分けてまとめてみる。

同意できる部分

 まずは、本書で同意できる部分について、まとめてみる。

貸したカネは捨て金と思え

 人にお金を貸すなら帰って来なくても後悔しない金額にしろ。それ以上の金額であれば、絶対に人に貸すなというのが著書の意見である。また、借金を踏み倒すようなやつとは、今すぐ縁を切れとも述べている。

【感想】
 完全に同意できる内容である。田中角栄も、「貸したカネのことは忘れろ。借りたカネは忘れるな。」と言っている。人にお金を貸すなら、それぐらいの覚悟が必要ということだ。「帰って来ると思う方が甘い」ぐらいの覚悟が必要ということだ。

お金に稼いでもらえ

 お金の稼ぎ方は2つある。1つは労働による対価、もう1つは、お金がお金を生み出すいわゆる不労所得(株式等)である。そして、日本ではいまだに「額に汗して稼ぐのが正しい稼ぎ方で、不労所得はギャンブル」とう考えが根強いとある。楽して稼ぐのは、ズルいという考えである。

【感想】
 投資全般以外にも、YouTubeや転売(せどり)などが目の敵にされるのも、「楽して稼いでいる」というイメージがあるからだろう。しかし、新NISAの登場により多くの人に投資というものが浸透してきているように思う。もうあと10年もすれば夫婦共働きやふるさと納税同様、不労所得も市民権を得ると思う。ちなみに、本書では投資対象としては、“インデックス投信一択”と述べられている。

年金制度は破綻しない

 少子高齢化により、若者の多くが「どうせ俺ら世代は年金なんて受け取れない、払い損」と腐っている。しかし、著者は“年金制度は絶対に破綻しない”と言い切っている。その理由として、国による支給年齢の調整(引き上げ)によるリバランス、年金機構の運用益、高齢者の労働率の増加などを挙げている。さらに、生まれて来る子供の数が少ないが、死んでいく老人の数が多いというデータもある。1人生まれて、5人死ぬという具合だ。

【感想】
 世の中絶対は無いが、私個人としても年金の破綻は無いと考えている。ただし、需給年齢の引き上げによる苦しみはあると思う。私自身、自分が年金世代になる頃には、70歳支給と覚悟している。そういう不安から、私を含め多くの人が貯蓄信仰に走ってしまうのもやむを得ないだろう。

FIREで幸せになった人はいない

 今、流行のFIRE、あんなもののどこがいいのか?とバッサリである。そもそも、年間4%の資産運用が未来永劫維持できることへの疑問と危険性を投げかけている。また、FIREしたい人は、現状の社会生活に不満を持っているのが原因のひとつと述べている。そんな生活を無理に我慢せずに、新しい世界に飛び込めと鼓舞している。

【感想】
 私もFIREしたいとは、まったく思わないのでこの意見には完全同意である。その理由として、仕事を含め現在の生活を“楽しい”と感じているからである。確かに辛いこともあるが、だからといってすべてをなげうって何もない世界に逃避しようとは思わない。そんなに辛ければ、FIREする前に転職すればいいのでは?と思う。絶対にそっちの方が難易度は低いはずである。

人に任せろ

 著者自身、仕事のすべてを自分一人でまわそうとは思っていない。他人に任せられる仕事は、どんどん他人に任せる。他者の雇用も創出して感謝もされる、とある。自分より上手くやれる人は、いくらでもいる。1人でなんでもやろうとしてはいけない。

【感想】
 こちらも完全同意である。そして、私も他人にお願いしまくる派である。やはり、自分でやるよりも、その道のプロに任せる方が確実で信頼も置けるからである。そして、書かれているように、お金を回して感謝もされる。反面、何がなんでも自分一人でやろうとする人がいるのも事実である。こういう人は、非常に仕事の効率が悪い。1馬力と5馬力では、どう考えても5馬力の方がパワーが出るに決まっている。小学生でも分かる理屈だ。

同意できない部分

 次に同意できない部分について記載する。主にお金に関する考え方についての内容が多い。

貯蓄信仰について

 著者は本書の冒頭で、有名なアリとキリギリスの寓話を例に出して次の様に述べている。あの話は、「貯蓄信仰」の最たるものである。しかし、現在はコツコツ貯めて冬に備えるというような考えはナンセンスであり、キリギリスの様に“人生を謳歌する生き方”が素晴らしくまた、キリギリスも飢えない社会となっている。生きていくために貯蓄は不要で、積極的にお金を使って人生を謳歌しよう。

【感想】
 ちょっと極端に消費に振りすぎているのでは?と思う。貯蓄も人生の謳歌もバランスよく行えばよいのではないかと思う。私も昔は貯蓄への偏りが大きかったが、人生の先が見えた現在は、“人生を楽しむ最後のチャンス”として積極的にやりたいことにお金を使うようになった。しかし、完全に貯蓄信仰は捨てられないのが事実である。

組織に頼るな

 「正社員であれば安心だ」という考えは捨てろとある。会社員であるメリットは、ゼロに等しいと述べている。正社員になるくらいなら、手持ち資金でベンチャー企業を立ち上げて自由に生きた方が良い。

【感想】
 まさに正社員である私にとっては、真逆の考え方である。年功序列、終身雇用の崩壊と言われて久しいが、実際私の周りで崩壊している現場を見たことは無い。そういうのは、大企業だけで、中小企業はむしろ慢性的な人員不足に悩まされており、中高年の首を切っている場合ではない。
 著者がオンザエッヂを立ち上げたのは、もはや30年前の話である。確かにこの時期はベンチャーブームがあったかもしれない。しかし現在それらの会社のいくつが残っているのだろうか。著者自身のオンザエッヂ、ライブドアもその例に漏れないはずである。人間向き不向きもあるし、起業ばかりが唯一の最適解ではないと思う。

家を買うな

 著者は、持ち家論にまったく同意できないと述べている。いわゆる賃貸派である。著者自身は、ずっとホテル暮らしなのだそうだ。持ち家に同意できない理由として、ローンの破綻のリスク、移動(引越し)の制約などを挙げている。

【感想】
 この考えには、半分同意、半分同意できないという感じである。近年のパワーカップルに代表されるような億を超える巨額のローンを組むことに関しては私も同意できない。私もできれば賃貸でもいいと思う、しかしこの問題の最大のポイントは「働けなくなった老後への対応」だと思っている。人生100年時代と言われる現在、90歳でどうやって賃貸料を支払うのだろうか。著者の様に十分な資産があるのであればこの問題は解決されるが、一般人としては、やはり老後への対策として持ち家は必要だろう。私としては、40代後半から50代のうちに、終の棲家を購入するのがベストと考えている。あまり若い年代で購入すると、新築購入でも死ぬまでに買い替えが発生する可能性がある。

その他同意できない部分

・小遣い制はやめろ
・行ける飲み会はすべて行け ⇒新たな出会い、仕事のチャンス
・掃除・洗濯はするな ⇒外注して自分の時間を作れ
・昼からうな重を食え ⇒そういうところでは、経営者などに出会える

【感想】
 こういった“お金は惜しまず使え系”については、貯蓄信仰に囚われている私としては、同意できない部分である。また、養うべき家族を持つとより一層散財に対しては敏感になってしまう。こういったアドバイスは、独身の若者には役に立つのかもしれない。

まとめ

 全体的に貯金等の安全志向以外の部分については、同意できるところが多い。特に資産運用については、譲渡益に対する税金が免除となる新NISAは、かなり国民に有利な設計となっているので、今後は家計運営に必須となっていくと思われる。「敗者のゲーム」など、国内、国外を問わず多くの人の検証の結果、インデックス投信が“最適解”という結論も出ている。あとは、購入のタイミングの問題だけだろうが、これも今後40年レベルでの投資時間を持つ若者には、誤差の範疇かもしれない。

 著者は最後に「やった後悔より、やらなかった後悔の方が大きい」と述べている。やりたいことのために、積極的にお金を使っていこうというのである。この部分については同意だが、どこまでリミッターを外すかは個人の性格によると思うが、それでも「やろう」と思ったことは、「やったほうがイイ」という考えは忘れないでおきたい。