この本を読もうと思った理由

 私がこの本を読もうと思った理由は、近しい将来シニアになる自分の参考になればと思ったからである。「高齢労働者は、なぜ激増したのか」本書の副題について知りたかった。また、それを知ることで今しばらく現役世代でいられる自分が、先に何か手を打っておくこと、気を付けておくことを学べればと思ったからである。

シニアの定義

 本書では、シニアを「60歳以上」と定義している。いわゆる「定年」を迎えた世代である。50代の私としては、もう目の前に迫っている現実である。そして、今の日本では60~64歳の8割、65~69歳の6割、そして70歳以上の実に半数以上が「現役で働いている」60歳定年の悠々自適な老後はどこに行ったのか?なぜそうならざるを得ないのか。本書からその原因を探ってみる。

ルポ 過労シニア(朝日新書、2025年11月、朝日新聞出版)

終わらない子育て

 本書ではシニアが働く原因のひとつとして、終わらない子育てが挙げられている。必要以上に子供の教育にお金をかけてしまった教育ローンの残高支払い、引きこもりの娘のために正社員を辞めて自宅勤務を選んだ母親。その他にも痛々しいケースが紹介されている。やはり、子供はさっさと独立させるべきである。「かわいそうだから」といつまでも家に置いておくと、その内共倒れになる危険性がある。

 日本の貯蓄額は〇〇兆円で、その大部分を高齢者が占めている。こういったニュースをよく目にするが、逆に65歳以上で貯蓄額100万円未満の割合は20%になるというデータもある。

無年金の実態

 無年金者の多くは自営業者である。というかサラリーマンは強制的に年金を給与から差し引かれるので、無年金になることは不可能である。意図的に狙っても出来ない。逆に自営業者は国民年金を意図的に納めないという選択肢もある。(正しいかどうかは別として)その結果、年金を貰う年齢になった時に後悔するパターンも多いようだ。

自営業者こそ自分を律する精神が必要

 本書でも、年収が1200万以上でサラリーマンをバカにしていた自営業者の話がある。しかし、時代の変化でその職業がパッタリと流行らなくなり、今では苦しい生活をしている。「ざまぁ」と言いたい訳では無く、自営業者は稼げている時に将来に備えサラリーマン以上に貯蓄をしておかなければならないということだ。自分を律することが必要となる。しかし、人間成功している時は油断しているときなので、この成功が将来も続くと思いなかなか貯蓄が出来ないのだろう。

現役と大差ある給与体系

 シニアの給与体系についてまとめてみる。正直、現役時代とは愕然とする差がそこにはある。

・障害者施設の支援員、フルタイム、自給1200円、手取り月17万
・ホテル配膳スタッフ、1日12時間労働、自給1800円、手取り月15万
・看護助手、1日8時間労働、自給1200円、手取り月15万

 正社員という雇用体系が無ければ、こういう現実が待ち受けているのである。これも、抗いがたい現実として直視し、今から何かしらの対策や覚悟が必要なのであろう。

シニアの職場とは

 シニアにはどういった働き口があるのだろうか。まずは清掃員である。身の回りを見ても駅のトイレなどを掃除しているのは高齢者が多い。次にスーパーの品出しや工場での単純作業、介護施設の職員である。新聞配達員というのもあった。共通するのは、立ちっぱなしの肉体労働である。本来であれば、高齢者に肉体労働は真逆の相性なのだが、そういった職場しかないのが実状である。

フルタイム手取り15万の現実

 他の事例も同じようなものである。時給は地域差はあるが、フルタイムで働いて月の手取りは15万が最高程度である。我々50代が考えなければならないのは、この現実を見てどう対処するかである。厚生年金受給者では月の手取りが21万という事例が記載されていた。これで夫婦2人が生活できるのであれば、無労働でも生きていけるだろう。あとは、有事の際の貯蓄がいくらあるかである。

どう対策すればいいのか

 正直、50代の私としては「まだ、対岸の火事」程度の感覚ではあるが、空恐ろしい。しかし、現実は着実に迫ってきている。どういう対策があるのか考えていかなければならない。まっ先に思いつくのは、65歳までは現在の会社で再雇用を続けたいということである。これであれば少なくともデスクワークであり、肉体労働からは解放される。

 仮に今いる会社で再雇用を選択したとして、手取りが15万となったとしても、本書で紹介されている他の職業でも同じよう手取り額であることが分かった。それならば、座ってできる仕事の方がまだ助かるというのが正直な気持ちである。

まとめ

 想像以上に厳しい現実が待ち受けている、ということを避けがたい事実として認識する必要がある。今から理解と覚悟が必要だ。個人的には、サラリーマン搾取と言われようが厚生年金で良かったと思っている。本書の実態を見ても、国民年金だけで生活していくのはかなり厳しい状況である。

 ただ、ポジティブに考えれば今後ますます進行が予想される少子高齢化による労働人口の減少により、働き口だけは確保されそうである。今は肉体労働が多いが、デスクワークにも人材不足が波及すれば、座ってできる仕事に就けるかもしれない。