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「芥川龍之介全集(3)」きりしとほろ上人伝、蜜柑、或敵打の話 他

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 芥川龍之介全集3を読み終わったので、有名所及び個人的に印象に残った作品について、まとめてみる。有名どころの判断は、本の背表紙に記載されているタイトルとする。ネタバレも含むので知りたくない方は読まないようにしてもらいたい。

芥川龍之介全集3(1986年、ちくま文庫)

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きりしとほろ上人伝

昔シリアの国に「れぷろぼす」という身の丈9mの大男が住んでいた。そんな男が立身出世を求めて誰に使えればいいかを、村人に聞いたところ「帝」がいいという答えを貰ったので、帝に使えることにした。

 しかし、帝は「悪魔」を恐れていたので、「れぷろぼす」は、今度は悪魔に使えることにした。しかし、その悪魔もイエスキリストにはかなわなかった。そこれ「れぷろぼす」は、今度はキリストの僕(信者)になったということ。その時に名前を「きりしとほろ」と改めた。

感想

 この話が何かの教訓的なモノを示唆するのか分からない。芥川龍之介がどの宗教を信仰していたのか知らないが、キリスト教やその他宗教系の話が多い。

蜜柑(みかん)

 「私」は横須賀から東京行の汽車に乗り込み出発を待っている。出発の直前に乗り込んできた田舎臭い薄汚れた13歳ぐらいの小娘が私の向かいに座った。汽車は出発し、しばらくするとトンネルに入ろうとしていた。その時向かいの小娘が私の横に来て窓を開けようとしている。

 やがて汽車がトンネルを抜けると、貧しい町はずれの踏切に差し掛かった。そこには、これまた薄汚れた男の子が3人並んでいたが、汽車が通ると一斉に歓声を上げて手を振り出した。その瞬間、小娘が手に持っていた蜜柑を男の子たちに投げ渡したのである。

 彼女はこれからどこか遠くに奉公に出かける。それを見送りに来てくれた弟たちに餞別として蜜柑で答えたのだった。

感想

 ページにしてわずか6ページであるが、レビューなどでこの「蜜柑」が芥川作品の中で一番のお気に入りという人が多い。今の中学校に入りたてぐらいの少女が、これから家族と別れて奉公に行く。そんな心細い中でも、見送りに来る弟たちに答える姉の思いが描かれている。

或敵打の話

 肥後の国(現在の熊本県)の細川家に、田岡甚太夫という侍がいた。この侍が家中の武芸試合で、指南役の瀬沼兵衛という人物を打ち負かした。それから数日後の夜、加納平太郎という侍が闇討ちされ命を落とした。同時に瀬沼兵衛が逐電した。加納平太郎は、田岡甚太夫と間違えられ殺されたのであった。

 直ちに、加納平太郎の息子及び田岡甚太夫他二名の合計四名が、敵討ちのために国を出発した。一行は、広島から愛媛へと瀬沼兵衛を追いかけ愛媛の浜で一度追いつくが、そこで一人が返り討ちにされてしまう。その後、残った三名は、近畿から東海を経て江戸まで行くが見つからない。

 江戸では加納平太郎の息子が、自身の病弱さを気負い自殺してしまう。が、そこで瀬沼兵衛が松江(島根県)に向かったという情報を得る。残った二名は執念で瀬沼兵衛を追いかける・・・

感想

 一人またひとりと仲間が減っていく中で、敵討ちが成就するのかしないのか、とても気になりドンドン読み進めてしまう。

その他気になった話

疑惑

 ある高名な学者が地方での講演を頼まれた。学者が夜、宿泊先の部屋でくつろいでいると、ある男が身の上話を聞いて欲しいとやってきた。その男が言うには、

 明治二十四年に岐阜で大地震があった。私の家もその時倒壊したのだが、妻が梁に足を挟まれて、どう頑張っても助け出せなかった。そのうち火事が発生し、火の手が妻に迫っていた。妻が生きながら焼かれ死ぬのを忍びないと思った私は、妻を撲殺しました。

 このことは誰にも見られていなかったので、私は地震で妻を失った夫として扱われた。後年、職場で同僚のふとした話が耳に入った。「あの時の地震で、酒屋の女房が梁の下敷きになったのだが、幸い火事で梁が焼け落ちて女房は助かった」という話を聞いてしまった。ねぇ先生、私はどうすればよかったのでしょうか。

南京の基督(キリスト)

 南京の古ぼけた家に少女がいた。少女は敬虔なキリスト教徒であったが、貧しい家計を助けるために売春婦として働いていた。ある時少女は梅毒に罹ってしまう。いくら治療しても一向に回復する気配はない。彼女はお客に自分の病気を移すことを恐れて、それ以来商売をしなくなった。

 そんなある日、外国人の客がやってきた。彼は言葉も分からないがどうしても彼女を買いたいといった。彼女は頑なに断ったが、結局彼と一夜を共にすることに。そこで彼女は不思議な夢を見て、キリストから「お前の病気はもう治る」と告げられる。実際、目が覚めると少女の病気はすっかり良くなっていた。そして、あの外国人の姿はなかった。

 翌年、元気になった少女からその話を聞かされた客は心の中で思った、「そういえば、知り合いが売春宿の料金をちょろまかして逃げてきたと自慢していてが、この話のことか。確かそいつは・・・」

感想

 個人的には好きなお話。芥川の作品には本当にキリスト教徒の話が多い。

⇒「芥川龍之介全集(2)」蜘蛛の糸、地獄変、奉教人の死 他

⇒「芥川龍之介全集(4)」杜子春、藪の中、トロッコ 他