ある一族の壮大な物語
私が「百年の孤独」を初めて読んだのは8年ぐらい前になる。その頃は「黙っていても(ハードカバー版だけでも)売れるこの書籍を新潮社が文庫化するわけがない」と言われていた。私も3,000円近いハードカバー版を買って読んだ。メチャクチャ面白くすぐに読み終わってしまった。
そして実際に8年の歳月を要して2024年に待望の文庫化。売り切れ続出など凄い人気だった。私も発売後すぐに購入したが読むのがもったいなくて温存していたのだが、ついに読んでしまった。2度目なので大筋や結末は分かっていたが、それでもおもしろく600ページあるが苦も無く読み終わってしまった。正直読み終えるのが残念でもあった。
百年の孤独(ガブリエル・ガルシア=マルケス、コロンビア、1967年、新潮文庫)
〇あらすじ
ある一族の7世代にわたる勃興と滅亡についてのお話である。ただ、平家物語のように天下を取って豪遊、我が世の春という感じではない。何もないところから仲間とマコンドという村を開拓し、その村が発展する中で“いち住民”として代々の日常生活が描かれているという感じである。
〇男はバカ、女がしっかりしている物語
登場する一族の男はことごとく何かに熱中し家族を顧みない、おバカが多い。逆に女(嫁や愛人)はしっかり者が多い。これらの女性陣が支えているから一族は存続しているという面もある。
〇主人公は誰なのか?
この物語の主人公は?と聞かれると、比較的早く世代交代し子供も多いので特定の人物を主人公として挙げがたいが、私的にはやはりウルスラということになるだろう。文庫表紙の右上が若き日のウルスラなのだろうか?
難解と言われている2つの理由
Amazonのレビューを見ると「難解すぎて読むのをやめた」という意見が散見される。これについては次の2つが理由と考えられる。
①登場人物が同姓同名すぎる
一族の物語なのだが、子供が生まれると先祖と同じ名前を付ける風習がある。例えば、初代を「野比のび太・太郎」とすると、それ以降長男は、野比のび太、のび太、野比のび太・次郎、(二代目)野比のび太と同じような名前が連続する。そのような状況に関わらず作中では単に「のび太」や「野比のび太」と書かれたりするので「“どの”野比のび太」の事を言っているのか分かりづらいのだ。
ダメ押しはこれが「のび太」だけでなくジャイアン(次男)としずかちゃん(娘)バージョンがあり、余計にこんがらがる。剛田武も「武、剛田武、剛田次郎、剛田三郎」と何バージョンか出てくる(笑)で、例によって「剛田」とだけ表現されたりする。ただ、この部分については家系図が付いているので、そちらを見れば一応は判別できるようになっている。
②超常の世界が混じっている
この作品は現実世界とラテンアメリカ特有の超常の世界が入り混じっている。それもなんの説明もなくである。具体的には幽霊や魔術、登場人物の長寿命(140歳等)「お前まだ生きとったんかぁ~」というパターンも多い。極めつけは、人間がある日突然天空に舞い上がり昇天(消滅)するという何でもありの世界である。「そういう」世界観を持って読む必要がある。
私のオススメする1冊に変わりなし
飲み会などで「本を読むということが多い」というと自然と「オススメは?」となる。そこで私は百年の孤独を薦めたかったのだが前述のように、これまではハードカバーしかなかったのであまり薦めてはいなかった。しかし、文庫化されたので今後は気兼ねなくオススメすることが出来る。
〇年末年始の休みにどうだろうか
この記事を書いた今は2024年12月で年末休みも近い。特にやることもなく暇という人は「百年の孤独」を読んでみるのはどうだろうか。登場人物の名前の件に注意すれば、独特の世界観に没頭できると思う。