こんにちは、井上向介です。アラフィフ、サラリーマン。子供2人は社会人となり独立。現在、妻と二人で生活しています。
この記事は、「サイコロジー・オブ・マネー」という本から学ぶことをまとめた記事です。
- 失敗や成功における「運」の要素
- 貯金の価値
- 人は合理的には動かないこと
書評(読みやすくおもしろい)
久々にお金に関する本を読んでみました。
2021年の発売時にすごく話題になり、いろいろなところで紹介されていた本をようやく読みました。
投資だけでなく多岐にわたりお金に関する知識や心構えが紹介されています。
サクサク読める
全体が20章に小分けされており、1章のボリュームが短いのでダレることなく読めます。
投資に特化するわけでもなく、「投資、貯金、浪費癖、マインド」など、幅広いジャンルを網羅しています。
内容も難解な内容はなく、簡素でサクサクと読み進めることができます。
デメリット(深掘りはしていない)
広く浅く網羅的に紹介されているので、裏を返せば各項目について、深堀りはせず表面的にサラっと書かれております。
そのため、内容が薄いと感じることがあります。
ただ、この1冊でお金に関する基本的な知識は身に着くので、初めの1冊としては最適です。
副題には、「一生お金に困らない「富」のマインドセット」とありますが、さすがにこれは言いすぎです。
以下、私がとくに興味をひかれた章を紹介します。
投資判断の決定(知性や教養は関係ない)
結論:各自の投資判断は、「いつ、何を経験したか」で決まる。知性や教養は関係ない
これは非常に興味深い内容でした。
本書の内容をまとめると、個人投資家の投資判断基準は次のようになります。
【投資判断の決定要因】
- 知性でも教育でも教養でもなく「いつ、どの時代に生まれ、何を経験したか」で決まる
- 各人がどのような経験をしたかで異なる
- とくに成人して間もないころの経験が大きく影響する
私たちは投資に対する自分のスタイルを持っていますが、それは知性や教育ではなく経験に大きく左右されるということです。
すべての人に当てはめるのは難しいかもしれませんが、個人的にはうなずける点があります。
どうしても下げ相場の影がチラつく
私の場合2011年頃の、日経平均が1万円以下で低迷していた①下げ相場の時期に②大きな損失を抱えた経験があります。
そのため、2012年末からのアベノミクス上げ相場で楽観的にはなれませんでした。どうしても、苦い経験がよみがえり懐疑的になってしまいます。
逆に、2013年以降に投資を始めた人は、①10年ほど上げ相場が続いてるので、②「投資って簡単」という経験が先行している人が多いのではないでしょうか。
経験した時期が少し違うだけで、ここまで大きく相場観やリスク許容度が大きく異なります。
【2013年以前】
- 下げ相場の時代
- 株価が下がる経験
【2013年以降】
- 上げ相場の時代
- 株価が上がる経験
上記の経験が、各自の投資判断を決定している可能性があります。
相場の転換期が来たときに注意
下げ相場を経験した私は、2013年からの上げ相場に乗れませんでした。
同じように、ここ10年で相場は右肩上がりという相場観を持っている人は、今後大きな転換期が来たときに注意が必要です。
上げ相場の経験がチラつき、「すぐに株価は回復するだろう」と保有を続けると本格的な下げ相場では大きな損失となります。
運とリスク(運の割合は誰にも分からない)
結論:人生は個人の努力を超えた大きな力(運)に左右される
なので、自分が成功していなくともそれほど悲観することはない。
この章は、「自分をダメな人間だ」と思いこむ傾向のある人に非常に有益です。
成功や失敗における運の割合は分からない
今成功している人も、実は「運」に大きく助けられた結果かもしれません。
同様に、今失敗している人も「運」悪くたまたまリスクが具現化してしまった結果かもしれません。
重要なことは、成功や失敗に「運とリスク」がどれぐらい作用しているのか、誰にも分からないということです。
このことを理解すると、自分が大きく成功していなくても悲観的にならなくてすみます。
自分にはたまたま「運」が作用しなかったと思えばいいだけです。
そして、世の中の大半はそういう人達ばかりなので、気を楽にしましょう。
割り切りが次へのステップとなる
この「運がなかった」という割り切りは重要です。
うじうじ失敗の原因を引きずることなく、割り切って次に進むことができます。
スポーツでいう「気持ち切り替えて行こ~」的なものです。
他者の成功例から学ぶのは難しく危険
我々は、成功者から学ぼうとします。その考え自体は間違ってはいないのですが、盲信は危険です。
なぜなら、その成功者のどの部分が実力で、どの部分が運により成功したのかは、誰にも(成功者自身も)分らないからです。
【成功した理由は?】
- ビジネスのアイデアが良かったから?(実力)
- 始めた時期や場所などの条件が、たまたま良かったから?(運)
⇒本当のところは誰にも分らない。ただし多くの場合、成功者は自分の実力だと思っている。(自己奉仕バイアス)
”実力と運”を正確に仕分けすることはできません。そのため、どこを真似ればいいのかの判断が難しくなります。
本書ではこう書かれています。
「あらゆる成功が努力によるものでもないし、あらゆる失敗が怠惰によるものでもない。」
これを理解しなければ、失敗するたびに自分を追い込むことになります。
3回失敗した自分はダメなのか?
例えば、
- 副業に挑戦したが3回とも鳴かず飛ばず
- 株式にも挑戦したが買った3銘柄すべてが損失で終わった
これは、自分の実力がないのか?運が悪かっただけか?
考えれば3回連続でコインの裏が出る確率は1/8(12.5%)もあるのです。
つまり10回に1回以上あり得るほど、普通のことなのです。
また、次に表が出る確率は1/2(50%)もあります。自分がダメだと思う前に、もう一度コインを投げる方が先です。
テールイベント(わずかな大勝が収支を支えている)
結論:投資家は5割の確率で間違えても、トータルでは勝てる
これは投資対象の大半は損失となるが、一部の大勝により収支はプラスを維持できるということです。
「負けは小さく、勝ちは大きく伸ばす」というものです。
そのためには、物事の大半は「失敗して当たり前」ということを受け入れる必要があります。
また、そう理解することで失敗しても精神的負担を減らすことができます。
【事例】YouTubeの再生回数
身近な例として、YouTubeの再生回数があります。
あるチャンネルの再生回数を見ていると、通常2万回程度の再生回数の中に突如40万回再生や、時には100万回再生などの動画があります。
こういう稀にある大当たり(今風にいうならバズッた)がテールイベントの具体例となります。
当然ですが、事前にどういう動画が大当たりになるかは、わからないのでとにかく動画を作り続けることが大事になります。
投資では厳しい面も
ただし、これを個別株などの投資に当てはめると、なかなかうまくいきません。
理由は資金力です。テールイベントの確率を上げるためには、多くの銘柄に投資する必要があります。
個人投資家には、たとえ100株でも手当たり次第に銘柄を買う十分な資金が用意できないので、YouTubeと違い実践は難しい面があります。
運も左右する
YouTubeの動画と同じく、投資でもどの銘柄が大きく伸びるかはわかりません。
迷って買わなかった銘柄がテールイベントであったということもあるでしょう。
この辺り、先ほどの「運」という要素が非常に大きく左右します。
貯金の価値(自動的に貯まる仕組みを作る)
結論:富を築くには、収入よりも貯蓄率が大きく影響する
「富を築くのに高い収入は必要ないが、高い貯蓄率がなければ富は築けない。」
本書ではこう書かれています。
いくら収入が多くてもそれと同等の支出があれば、お金は貯まらない。当たり前のことですが、それに気づかない人もいます。
不労所得ならぬ、無意識貯金
多くの人は不労所得を得ようとします。しかし、それだけでは収入を増やすことはできても、貯蓄を増やすことはできません。
貯蓄=収入-支出 です。
小学生でも理解できる単純な引き算です。
自身の生活において、この数式(収入>支出)が成立している限り、寝ててもお金は貯まっていきます。
まさに、知らない間にお金が積み上がる「無意識貯金」です。
支出は自分でコントロールできる
貯蓄率を上げるためにすることは2つです。
【貯蓄率を上げるポイント】
- 大事なのは収入ではなく、貯蓄率と理解する
- 少ないお金で幸せを感じる生活方法を見つける
- そして、それに慣れる ⇒勝手にお金が貯まる段階
③の段階まで到達できれば、意識することなくお金が貯まっていきます。
ただし、そのためには「お金を使いたい、贅沢したい」という欲求をコントロールする必要があります。
合理的>数理的(健やかな夜を過ごすために)
結論:人間は機械ではないので、数理的に正しい投資戦略よりも、合理的な戦略を求める
合理的な戦略とは、具体的には「夜に安心して眠れる投資戦略」と表現されています。
つまり、「自分の性格に合った無理のない方法を選択せよ」ということです。
人間は機械ではない
人間は機械ではありません。たとえ「計算上(理論上)儲かる」ことが分かっていても、人はその通りには動けないということです。
なぜなら人間には精神があり数字上正しくても、精神がその負荷に耐えられないことがあるからです。
リスク許容度は人によって異なるので、どこまでの損失に耐えられるのか自分で見つける必要があります。
余裕資金での投資
この考えは非常に共感できました。「投資は余裕資金で行え」というのも、ここからきていることでしょう。
減ってはいけないお金で行う投資は上手く行きません。そもそも負けない投資などありません。
⇒【投資の基本】株・投資の資産運用は余裕資金で行うべき3つの理由
本書の別の章では次のように記されています。
- この世に無料のものはない
- 代償を払わずにリターンを得る”泥棒”になってはいけない
まとめ
この本から私が学んだことは、次とおりです。
【この本から学んだこと】
- すべての行いには運が強く作用しており、運を自力でどうにかすることは出来ない
- 投資における利益は、わずかなテールイベントにより支えられており、テールイベントに出会うには運の要素もからむ
- 収入>支出を維持し、努力せずとも毎月貯蓄ができる体制を整える
- 利益よりも自分たちの精神的安定を優先する
すべてを紹介しきれていない
本書は、20章から構成されているため、すべてをまとめることはできていません。
私が共感を得られた、参考になったと思う部分を紹介しています。他にも、
- 裕福になることと裕福であり続けることは違う
- 楽観論よりも悲観論を信じられるわけ
- 人が魅力的なフィクションを好む理由
など興味深い内容についても説明されています。興味のある方は、是非読んでみて下さい。